その上、追い討ちを掛けるように、こんな会話が聞こえてきた。

「ねぇ、あの噂聞いた?」
「赤城課長でしょう! 神崎さんに本気アタックし始めたんですってぇ」

食堂で素うどんをチビリチビリと食べている時だ。

「私も聞いた。でねっ、赤城課長って白鳥課長の遠縁に当たるらしいわよ」
「エッ、じゃあ、KOGO一族じゃない! 神崎さん、玉の輿じゃない」

だからか……白鳥の代わりにここに来たのは。
KOGO一族か……。

最初からなかった食欲だが……一本だけ食べた素うどんを見つめ、グレーの息を吐き、立ち上がる。そして、調理のおばちゃんに、心の中で「ごめんなさい」と謝り、トレーを持つと返却口に向かう。

「――矢崎課長、顔色が悪いですよ」

空っぽの食器が並ぶトレーを返却口に置きながら、君島が声を掛ける。

「聞きました? 神崎さんのこと」

ギロリと君島を睨むが……こいつにはボディーランゲージは効かないようだ。

「なんかぁ……」と言葉を続ける。
クソッ、赤城とのことなど聞きたくない! と思っていたら……。

「風邪をひいて、ずっと休んでいるそうですよぉ」

――風邪?