貧しいながらも、優しい奥さんと、可愛らしい娘さんと一緒に、つつましく毎日を送っていた

ところが…

一刀斉が夜勤のとき…

悲劇が襲った

彼の家の近くで起きた火事が、折からの強風にあおられて、瞬く間に燃え広がり…

火の手は悪魔の舌のように彼の家に押し寄せた

不幸にも、逃げ遅れた奥さんと娘は…

…………

同僚の同心たちと共に付近の町民の避難、誘導に当たっていた彼は、一段落したあと家に急いで戻ったが、そこには…

崩れ落ちた家の下敷きになり、抱き合うように身を寄せていた、二人の無惨な姿が…

「…そんな、ひどい火事だったの?」

「うむ、『火事と喧嘩は江戸の華』と言うてな…」