「そうかしら。」

姫君は呟いて、くるりと向きを変えた。

「変わらないわ。変わったのは、場所と、貴方の存在よ…………………」

久光は黙り込んだ。

「貴方は、自分のことを、卑下しすぎだわ。本当は、この上無く素晴らしい人なのでしょうけれど。」

(そうだったかな……………でも、そうかもしれない。いつだったか。僕が、己を卑下し始めたのは。)

久光は、懐かしみながら、考え込んだ。


自室で、1人の若君が文机に向かい、勉学に勤しんでいた。