曼珠沙華 -夢の通路-

「ん、何?久しぶりだな、この呼び方。」

(そう言われりゃ、納得がいくわ。)

久光が大君よりも博学だったのも、趣味が良いのも、おかしくなかろう。

つまり、姫君が口ずさんだ「我に露」の歌の意味をすぐに言えたのも、彼はこの歌を知っていたから。

ついでに言えば、大君は姫君や久光よりも家柄の低い家の娘だった。

珠寿は、久光の家柄がこの上無く良いことを知り、

(嗚呼、久光の父君が生きていらしたら…………零落せずにいたのに。そしたら、姫様をお幸せになさってくれたかもしれない。)

と、思う。