「ハル様、何かお飲み物をお持ちしますね。」
アユールが気遣ってくれる。

ハルは放心していた。



『生き延びるために』


頭の芯がぴりぴりしている。



『守ろう。』


『おまえを利用している。』


『おまえも私を利用して、、』


コウジュンの言ったことが、
コウジュンの顔が、

頭の中をぐるぐる回っている。




白いシャツの背中越しにかばってくれていたことが蘇る。


ラドゥールだから。


最初から利用するために。


『お互いが生き延びる為』



そうかもしれないーー、、



突然落ちてきた私、
行く末が掛かっていたコウジュン、
お互いさまのはず。

ここがどこかもわからない。
保護されて、私にも悪い条件じゃない、
はず。

なのに、、



鼻の頭がツンとする。


信じてくれてたんじゃなかったーー、、
その事がこんなにも心を突いた。


青い瞳はいつもまっすぐで、
微笑まれることはほとんどなかったけど、
けど、、


目も鼻ももう涙でぐじゅぐじゅだ。


コウジュンは最初からそう言ってた、
『私のラドゥール』。
何度も言ってた。

だから言ってたの?


信じる信じないじゃなくて、

私が誰かなんて、

どっちでも、よかったから。

ラドゥールにしてしまえる、
皇子である彼にはそれくらいの力があるのかもしれない。


勝手に涙がこぼれてしまう。


ズドーンと落ち込みにはまりこんでしまいそうになっていた時だった。




「違いますよ。」

急に声がした。