腕が痛い。
掴まれた腕は相当な力で握られていた。

信じられないという顔で立っていたのは、弟皇子のケイジュンだった。
「あ、あぁ、、兄上、失礼致しました!
驚いてしまって、、つい、、」
ぱっと腕から手を離し一、二歩下がるように身動いだ。
「つい?ものすごい力が出るものだな。尼僧に扮するには惜しい力だ。」
だがそれでも、聞かずにはいられないというように、ケイジュンは顔をこちらへ寄せてきた。

「兄上、代理とは、、どういうことです?」

「ケイジュン様、お声を抑えてくださいませ!」

「ラドゥ、、!ぁ、、

あの方は今どちらに?!」


「・・・」

「ごまかそうとしてもだめですよ!」
声を抑え兄皇子に迫るケイジュン。
「そんな風に見つめられてもだめです。
私は聞いてしまいましたからね。
兄上、あの可愛い方は、今どちらに?!
何故代理などという話になっているのですか?!」

コウジュンはしっと自身のくちびるに小さく手を当てて見せた。

ケイジュンのくちびるがぴたりと止まった。


「よいか、これは他言無用だ。」
「、、っ!」
「ハルの身が危険だ、心して聞け。」

ケイジュン皇子がこくこくと頷く。


ふたりが顔を寄せあった。
その時、楽団の調べがそれまでのゆるやかな曲調と異なり、鼓笛の軽快なリズムを打ち鳴らし始めた。