「式の間は代役でも立てればいい。
頭からヴェールで覆ってしまえば中身が本物のラドゥールかどうかなどわからないだろう。」

「そんな、、」
ハルは胸が詰まってすぐには言葉が出てこなかった。
『もう、、私でなくてもいいっていうこと?

ラドゥールが突然いなくなっても
コウジュンは本当に大丈夫なの?
皇太子の思い通りになってしまわない?』
ハルの気持ちはコウジュンには伝わらない。


青い瞳はここ数日なかったほど、冴えた光を宿していて彼の決意の固さを映しているようだった。

「感謝している。ハルはよくやってくれた。」

そう言ってひとりで行こうとする彼を、
ハルには留める術が見当たらない。

大きな背中が行ってしまう。
「あと三日だ。
私は式の準備で忙しくなる。

帰ることはガインとユンハには伝えておくから、ハルも帰る準備があればするといい。」


『待って』の声を掛けられないくらいの早さで、彼は護衛の兵を呼び「ラドゥールを上の執務室まで送るように。」と指示すると行ってしまった。颯爽と、眩しい背中だけを見せて。