『万が一の場合に備え、ひと部屋に留めておくのは致し方ない。』そう言っていたユンハが、「ラドゥールを信じてみたくなった」と言って以来、急激にハルに対して温和になっていた。
今では下の庭程度なら安全だと、率先して彼女の息抜きに時間を割いている。

「皇子もご一緒されたらよろしいのに。」

ひとり執務室で書類に目を通しながら、下が気になり余計に時間をかけてしまっている。

これでは仕事にならず、一旦ペンを置いていたところだった。

ハルの息抜きには私も賛成だ。
安全が保障されるなら少しでも外にださせてやりたい。その傍にいられるのが自分なら、もっと良かったのだが。

苛立ちの原因はそこだ。


ふー、っと背もたれに身体を預ける。

「そうだな。」





穏やかな日々にハルの外出も近くまでなら、と軟禁状態が解かれ始めていた。
それがまさか、あんなことにつながるとは、この時は思わなかった。