諒side

これで、よかったんだ…

俺はそう自分に言い聞かせた。

今日は北海道へ出発する日。俺は駅のホームで新幹線が来るのを待っていた。

藤谷には来るなって言ったし…

ピンポンパンポン

"まもなく4番線に電車が参ります"

あ、そろそろだ。

そう思い待合席からたった時、

「渡利!!」

いるはずのない人の声が聞こえた。

ゆっくりと振り返ると、

「はぁっ はぁっ」

肩で息をしている藤谷がいた。

「おまえ、どうして…」

「ごめんっ、来ちゃって…でも、やっぱり見送りにきたくて…」

「…」

「これ、食べて…?」

そう言って弁当を渡してきた。

「おぅ、ありがとう。」

「箱は渡利が帰ってきた時に返してね?」

「っ」

「待ってるから。」

俺は思わず藤谷を抱きしめた。

「渡利…」

「ん?」

「電車ってあとどれくらいで出る…?」

「あー、あと五分くらい?」

「その間だけ…」

「え?」

「今から電車が発車するまでの間だけ、泣いてもいい…?」

胸がぎゅっと締め付けられたようだった。

「あぁ。」

そう言うと藤谷は体を震わせて泣き出した。

ごめん…藤谷。そして、ありがとう…