「つまり、鳴海んの為なんだろ」
「何故、僕の為」
猜疑心の強い眼差しで見るが、あっけらかんとした顔で言う。
「あぁ。鳴海んは接触禁止になってる人間なんだけどね。フラッシュバックの原因を知ってるみたいだから、みかどちゃんが誘惑して聞き出すんだってさ」
「な、何でみかどちゃんがそんな事を僕は、別に平気なんですよ」
オロオロし始めると、苛めるのを満足した理人が猫たちとテラス席に消えてしまった。
「僕……本当にこのままで良いし、今の生活に不便なんて無いから、危険な事、しないで下さいね」
「だったら、私、201号室から出て行かなければいけなくなるんです。お兄さんの隣の部屋なのに、お兄さんがフラッシュバックを起こしてしまう、ワードや出来事を知らなければ、もし『それ』を言ってしまったら……もし思い出させてしまったら……私は、もう此処には居られなくなるんですよ。だから、お兄さんを傷つけても、お兄さんの隣に居たいから、彼と対決するんです。大丈夫、です。皇汰たちとしっかり相談しているんですから」
安心して貰おうと明るく笑うが、店長の顔は晴れない。店長は複雑そうな顔ではミキサーに牛乳、砂糖、苺、蜂蜜と氷を入れて、混ぜだした。ガリガリと氷が削らていく音は胸が高鳴りそうだが、みかどは意味が分からずただ見つめた。
「ふうん。二人とも、そんな雰囲気なんだあ。だからみかどちゃんも店長の為に頑張るんだ」
「ほん、本当にお兄さんには関係ないから、違います!」
ぽかんとする店長はどんどん寂しそうに瞳を揺らす。
「――そんな、僕の事なのに」
喋れば喋る程にどつぼにハマりそうになり気まずくなったみかどは、固まっている店長を残し、そろりそろりと逃げ出した。
「うぅ……。理人さん酷いです」



