カフェ『アルジャーノン』の、お兄さん☆



店長が優しく背中に話しかけると、定宗は親子に背中を向けた。そして全力で両手足で親子へ砂をかけると、店長を守るように足に纏わりついていく。店長の足と足の間を八の字に移動しつつ、親子に早く帰れと威嚇の低重音の声を上げた。

「定宗さん、許してあげて下さい。今はこのサボテンの延命が大事です」
 毛を逆立てた定宗は尚も親子に立ち向かっていくが、それをみかどが抱き締めた。

「行きましょう。――行きましょう、定宗さん」


ポロポロと泣くみかどは、10キロ以上する定宗を愛しげに抱き締めた。定宗も引っ掻くことや噛みつくこともせず、格好だけ暴れてみているようだった。
 店長とみかど、そして定宗。三人の長い影が、夕日を浴びて長く長く地面に伸びる。その中を、みかどはただただしゃくり声をあげて黙々と歩くのみだった。「さっきの」
口を開いたのは、店長だ。

「さっきの親子は、サボテンには悪でも、親子としては素敵でしたね」

その言葉は、みかども感じていたことだった。自分は親にあのように庇われた事はない。親をあのように庇ったこともないが、あの親子はお互いを守り慈しみあっている。親子としては理想的な関係だったろう。それが羨ましく自分の立場がちっぽけに見えて、みかどは寂しくて身体を震わせていた。
「みかどちゃん。僕ね」