カフェ『アルジャーノン』の、お兄さん☆


岳理は依然みかどを離さないまま、座り込んで自分の裸足の足を見て溜め息を吐きました。
(裸足のまま、追ってきてくれたんだ)
 落ちつきを取り戻し話も済んだし、そろそろこの状況を何とかしたいと岳理を見る。

 微かに、岳理の腕に力が入る。
「お前、俺が連どんだけ苛々したと思ってるんだ」

 心配じゃなくて、苛々って所が岳理らしい。

「1人で悩まずに周りに頼れって言ったのに、この馬鹿っ」
「ひ、酷いっ」
「鳴海の事は、俺も考えてみるから今日はとにかくもう帰るぞ」
「……はい」

 やっと離されたと思ったら、腕を掴まれて立ち上がらされる。
「車出すから着いてこい」
「ここで待ってま」
「着いてこい」
「はい」
 こうしてなんちゃってシンデレラは、お城ではなくお寺から逃げ出したものの、またお寺に戻る事になりました。


「探偵の依頼来てたし丁度良かったか」
「探偵の依頼」

 岳理さんが、鍵と煙草をポケットに仕舞い、上着を羽織りながら言う。というか、探偵も本当にしていたようだ。

「迷子の猫を探して欲しいって。アルジャーノンの近くで」
「あそこは定宗さんが管轄だから聞けたら早いですよ」
 用意が整った岳理にまたもや腕を捕まえられてしまう。

「行くぞ」
「あの、」
「却下だ」
(お、横暴だ! この人やっぱり優しくない)

岳理に引きずられる様に階段を下りて行くのに、腕が熱いのは、岳理の体温が伝わってきたから。

どうして……だろう。捕まえられた腕を、離して欲しくないなんて。何でこんなに、胸が苦しいのだろう。岳理の背中は、大きくてすぐそばにあって、ドキドキが伝わらないかビクビクしてした。甘酸っぱい気持ちが広がっていく。速く速く車に乗り込まなければ。車に乗り込むと、まだ髪が少し濡れた岳理の横顔を見てしまった。よくよく考えたら、捕まえる為とはいえ、みかどは岳理に抱きしめられたのだ。

「!」
「――何1人で暴れてんだよ」

 迷惑そうに岳理がみかどを見た。重ね重ねみかどは恥ずかしくなっていく。
「そんなんじゃ、甘ったれた姫さん助けられねーぞ」
「姫さん」
「202号室に閉じ込められた能天気な姫さんだよ。姫さん助けるんだから、みかどは王子様だな」
「私がですか」
 そんな凛々しい王子様には、到底なれそうになが、やはり店長をあの部屋から出したいのなら、王子様になりきらなきゃいけない。
「で、今日は俺の所までおめかしして来てくれたシンデレラな」
 クッと馬鹿にした様に笑う。孔礼寺まで迷って歩きまくったから、髪はボサボサ、靴は泥だらけ、泣いた目は真っ赤。そんな姿のシンデレラなんて居ない。
「意外とロマンチックですね。じゃあ、お兄さんは塔の上に閉じ込められたラプンツェル姫なんですね」
「……お前、ラプンツェルの話読んだ事ねーだろ」