ずっと恋に興味が湧かなかった。
今もそれに変わりはない。
「デートどうだった?」
なんて会話がお昼休み中繰り広げられている。
夏帆は聞き上手で情報の手綱を器用に操っている。
だから同じグループ会員の田辺理穂ちゃんの恋愛事情にも、瞬時に反応する。
「んん〜、微妙かなあ。」
理穂ちゃんは多分このグループの中で一番男子からの人気が高い。バスケ部の彼女は運動神経抜群で、ショートヘアがトレードマーク。さっぱりとした性格が男女共々から好感を持てる…
と、聞いたことがある。
「ええー、なんで!一馬くんイケメンじゃん!」
夏帆がまくしたてる。よく話題に出てくる『一馬くん』とは、隣のクラスのクール系男子、らしい。本名は、不明。
「いやかっこいいけど奥手だからね〜。」
「ああー、確かに!見た目はオオカミ君なんだけどなあ。」
そう相槌を打ったのは、またしても同じグループの浜辺楓ちゃん。かえちゃんと呼ばれる彼女は勉強家で、見た目は若干地味。だけどアニメオタクで、恋愛となればすぐに食いついてくる。まあるいメガネがかわいいかも。
「で、咲は?」
そう聞かれたわたしはぼうっとしいたせいもあり、結構焦った。
何て言おう…正直男子とかよくわかんないし…
そんな視線の先にうごめく姿を発見。
竜馬だ…
ジャムパンを持って廊下をふらふら歩いている。
「あ、っと…神木竜馬くん…とかは?」
「ええー、まじ?」
夏帆が楽しそうに目をチカチカさせる。
「神木ねえ。」
「一番かっこいいけど…」
「「「ねえ。」」」
三人揃って何か通じ合うものでもあるのか、頷いている。