「必ず僕の虜にしてみせます」

私の唇を彼の繊細な指がなぞる。

 「自分を傷つけちゃいけませんよ。夏華…」

さっきまで噛み締めていた唇が熱くなる。

 「僕だけしか見れないようにしてあげます」

普段とは違う挑発的な彼の姿にドキッとする。

 「もう一度言います。僕は夏華のことが好きです」

彼が私の名前を呼ぶ。
それだけで早鐘を打つ心臓。

 「僕の彼女になってください」

優しくて、照れ屋で丁寧な口調の彼。

 「でもっ!」

こんなの駄目だ。
彼の気持ちは素直に嬉しい。
だけど、私の心に居るのは彼じゃない。

 「もう待つのはやめます。僕は夏華がほしい。貴方と一緒に居たい」

まっすぐに見つめられて目が離せなくなる。
短い間でも彼に心惹かれていく感覚があったのは紛れもない事実。

 「僕の手を取ってくれませんか?」

私は彼の手を取っていいのだろうか。