クロネコ童話

「いけないっ!」

と魔術師クロネコが叫びました。

手がサッと振るわれ、星のカーテンを散らすようにコンロの火が消えます。

「魔術師!?」

驚いたエースに、魔術師は少し、苦い顔をしました。

「すみません、危うく沸騰させてしまうところでした」

「沸騰させてしまうと、いけなかったんですか?」

「沸騰直前、おおよそ、90℃が最適」

横にやって来た節制クロネコの言葉に、魔術師クロネコはこくり、うなずきます。

「今の湯気を見ると、一瞬なりとも沸点に達してしまったかもしれません……お湯は生きているのです。若干、味に変化が……」

「そうですか……」

エースクロネコは、少しだけがっくりし……かけましたが、すぐにふるりと首を振ります。

「大丈夫!」

とふあふあの握り拳。

「私達が誠心誠意込めて、コーヒーを抽出します! そうすればきっと、きっと美味しくなるんです!」

「みなさん……」

些細な失敗にめげない聖杯部隊のクロネコ達に、魔術師はちょっぴり、綿の胸に染みるものがありました。