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 俺は雨が好きだ。
 昔からなぜか傘をささずに濡れるのが面白くて、よく母さんに怒られた。それは今でも変わらない。



 夏の夕方。突然降ってくるあの激しい雨。
 周囲の音が聞こえなくなるくらいうるさくて、でも何か訴えているみたいで好きだ。



 世界に1人しかいないような感覚に陥る。
 そんな孤独感に安心するなんて、俺は少し変なのかもしれない。



 でも今日だけは違う。
 その孤独感が、1つの代償と願いによってより強く俺を追い詰める。怖かった。



 あの日は祐介と遊んで帰ったけど、俺は今それどころじゃなかった。
 咲良がいる。咲良が生きて、俺の家にいるはずなんだ。