「亮、一ノ瀬の親父かよ!」

「うるさいな」

「ま。幸せにしたいけどさ」




 祐介はひとしきり笑ってから、俺に向き直って真面目な顔をする。
 真剣な目はあの日も見た気がする。




「亮、一ノ瀬のこと好きなんだろ?」




 つぶらな瞳が俺を見据えていた。その真っ直ぐな力強さに、負けてしまいそうになる。



 そうだ。俺は咲良が好きだ。
 これまで気づきもしなかったし、幼なじみという関係性に隠れていて女として見たことがなかったんだ。



 好きだ。俺は、咲良が。



 だけど今、言うわけにはいかない。



 俺は資格を失ったんだ。咲良を死なせないために、俺は恋をすることをやめる。



 簡単なことだ。




「俺と咲良はずっと幼なじみだよ。ずっと……」