「なんで今、ラブレターなんだよ! 結婚したいんだったら、傍にいなきゃダメだろ……っ」




 ラブレターが濡れていた。
 大事なラブレターなのに、濡れて駄目になりそうでも、涙が溢れてくる。




「嫌だよ、お前のおにぎりが食べられなくなるなんて」




 俺は大切なものを失ったことがない。
 いつも傍にあって、追いかけなくても手の届く場所にいたから。



 大切だって気づいてもいなかった。
 当たり前に、隣で笑っていたから。




「こんな手紙で終わりなんて、嫌だよ。嫌なんだよ……っ」




 この気持ちをどこにぶつけたらいい。この想いを誰に伝えたらいいんだ。




「咲良ぁぁぁぁ!!」




 俺は子供のように泣き続けた。



 もう見ることのない笑顔。
 触れることのない腕。
 バカなことを言う口。



 いろんな咲良を想って、泣き続けた。