「祐介さ」

「なに?」

「カラオケ行かない?」

「へ?」

「だって今日、部活ないんだろ?」

「ないけど……」

「じゃあ、決まり!」




 咲良が好きだ。



 その気持ち、今だけは忘れていたい。
 今だけは認めたくない。
 今だけでいいから、いつも通りでいたい。



 だから、ただ逃げているだけだとわかっていても止まらない。ぶつかる勇気なんて、どうやっても湧いてこない。



 俺は祐介の腕を引っ張り、

「相談のったんだから、ジュースくらい奢れよな!」

 強気にジュースを要求する。




「ちょ……金欠だよ?」

「知るか!」

「話聞いただけだろ?」

「同じだ。奢れ!」




 そんな会話をしながら俺たちは教室を出る。



 時が止まってほしい。そんな馬鹿みたいなことを思いながら。