嫌な感情が生まれた。



 裕介に取られたくない。咲良に告白してほしくない。このままでいたい。
 醜い感情が俺を壊そうとする。




「じゃあ、なんで付き合わないの?」

「咲良の方は幼なじみとしか思ってねえよ」

「聞いてみなきゃわからないだろ?」




 そう、聞いてみなけりゃわからない。そんなこと、百も承知だ。告白してみたら全てわかる。




「お前と同じような感じだよ、祐介」




 即答していた。
 俺だって関係を壊したくはない。裕介以上に、俺は臆病者だ。




「幼なじみってさ、難しいから」

「そういうもん?」

「そういうもん」

「一ノ瀬は、そんな感じしないけどな」

「そうかもな」




 咲良はいつも、友達として明るく接してくる。だから、告白なんてして恋人同士になりたくないと思っていた。



 現状に満足している。
 このままでいたい。
 何も変わらない関係でいたい。



 壊したくないんだ。時間をかけて築き上げてきた咲良との関係を。