「本当のこと教えて!」
「本当のことって、なんのことだよ?」
水を流し込んで喉を潤す。
夏なのに閉め切った教室は暑くて、緊張してないで窓くらい開ければよかったと後悔する。
「亮、聞いてる?」
「聞いてる」
「一ノ瀬のことで聞きたい」
「あいつがなに?」
わかってるくせに。
自分自身、聞きたくないと拒否をする気持ちを必死に抑え込む。
「女として興味ないの? 付き合う気ないの?」
何度も聞かれたことがある。
一ノ瀬咲良は本当に幼なじみなのか、と。
付き合うつもりはないのか。
恋愛感情はないのか。
どうして、どうして、と。
そんな質問が嫌いなことを裕介は知っている。
それをあえて口に出したということは、隠すつもりはないということだ。



