咲良に想いを告げない。



 その決意が全てを変えた。
 咲良と、もっと高校生活を楽しめたはずなのに。お互いに苦しい思い出ばかりを作ってしまった。




「咲良」




 俺は立ち上がって、座っていた咲良を引き寄せる。
 抱きしめると途端に感情が溢れて止まらなくなった。



 こんな近くに咲良がいる。
 それだけで胸がいっぱいだ。



 悲しい想いと、嬉しい想いが混ざって、抱きしめているだけなのに胸が苦しくなる。




「ちょっと、亮――――」

「好きだ、咲良」




 咲良が息を呑む。



 無理やり離れようとしていた力が、急に弱まってされるがままになった。



 咲良は俯いて、消え入りそうな声を出す。