*** オイル時計で思い出すのは、素直だった幼い俺たちのこと。 『咲良のこと、好きだよ』 『ほんと?』 『好きだから一緒にいる』 『じゃあ……約束してくれる?』 咲良が近くに引っ越してきた時にした大切な約束。 『結婚して』 大人びた約束だ。 その意味なんて知りもしない子供だった。 必ず守るという絶対的な効力はない。 『……約束』 それでも、咲良はオイル時計を大事にしていた。 その約束が果たされることを願って――――。