「彼女は知っていたようだの。お主からの愛情を」




 姫巫女はゆっくりと歩き、咲良の横で止まる。
 俺から目線をそらすことなく、自分の唇に手をやる。




「軽率な行動だったな。お主のキスによって、一ノ瀬咲良は何かに勘づいたようだ」

「何かって?」

「理解出来ぬ雨宮亮の行動」




 言い返すことが出来ない。全て姫巫女が正しいのだから。




「頭がいい娘よ。雨宮亮の想いを彼女は知っている。好きだからこそ離れていく。その心理にたどり着いたのだから」

「でも、好きだなんて一言も……」

「今は言わない理由を探しているようであったぞ。このまま関係が続けば、いずれ綻びが見えてくる。ただ黙っておればいいという状態ではなかったのだ。よい機会だったとも言えよう」

「……クソ」




 終わった。俺の計画は全て消えた。
 咲良の命も、俺の想いも、何もかも螺旋にのみ込まれてしまう。