俺は座って咲良の目の前に小指を立てる。それを見た咲良が一瞬ぽかんとした表情を浮かべる。
 しかし、すぐに気づいたみたいだ。




 ――――約束。




 あの日に交わした約束を咲良はしっかり覚えている。忘れてなんかいない。忘れようとしていただけ。



 咲良は真っ直ぐに見つめてきて頷いた。
 やはり、オイル時計のことははっきりと覚えているんだ。



 少し恥ずかしい気もする。でもあの日があったからこそ、俺は一つの答えを導き出すことが出来た。
 咲良には本当に感謝している。




「咲良。気持ちを聞かせてくれないか?」

「気持ち?」

「俺のこと、どう思ってる?」

「……え。わたし、は……」




 目に見えて赤くなったり、困ったり、怒ったり、照れたり、言葉を探す咲良の百面相が続いたかと思うと、急に真面目な顔で俺を見る。