咲良はオイル時計を持って遊び始める。
 咲良のお母さんから預かった時、埃さえかぶっていなかった。聞いてみると使わない時は箱に入れてあるのだとか。




「大事な話……」

「え?」

「大事な話があるって言ったよな?」

「うん。聞きたい」




 緊張する。何から言っていけばいいか迷う。



 俺は一度立ち上がって、花火を見るふりをする。
 何度も深呼吸を繰り返し、胸に手をあてる。



 心は決まった。
 迷うな。恐れるな。
 自分で決めた道だ。
 文句は言わせない。




「咲良」




 ゆっくりと振り返って咲良に向き直る。




「そのオイル時計の話、覚えてるか?」

「え? オイル時計の?」