「すごく綺麗」
そう言った咲良の横顔は、花火の光で様々な色に変化する。
真っ直ぐに見つめる先にある夜空。
それを突き破るような花火が、俺の心を動かす。きっかけがないと動けないなんて、情けないけれど。
「咲良」
「ん?」
「これ、覚えてるか?」
俺はコートの内ポケットにしまっておいたそれを机に置く。連続した花火のおかげで、それははっきりと見えた。
「それ、なんで?」
咲良は目を見開く。
小さなピンク色の水が螺旋状の階段を下っていく。咲良が大切にしているオイル時計だ。
「ちょっと借りてきた」
「わたしの部屋から?」
「咲良のお母さんには許可もらったよ」
「わたしの知らないところで何やってるのよ?」



