「それで? 高校に何の用があるの?」
咲良が話を振ってくる。
「ほら、あっちの方向見てろ」
「え?」
俺は椅子に座り直す。
俺たちの通っていた高校は、緩やかな坂道の上に建っている。丘のような場所にあるからか、街全体が見られそうなほど綺麗な夜景。
午後7時ちょうど。赤と緑の花が夜空に咲いた。
「花火?」
「母さんに聞いたんだ。クリスマスのイベントでやってるって」
「あ。そういえば、そんな宣伝してた気がする」
「会場があの先の河川敷。だから、高校から見えるんじゃないかって思ってさ」
この花火のことを母さんに聞いていたのもあるが、高校の教室に入りたかったという気持ちもあった。
祐介の方はどうか知らないが、俺としては運良く別行動出来た。
2人きりになれたことはありがたい。



