「まさか学校に忍び込むなんて」

「スリルあっただろ」

「誰かに見つかったらまずいんでしょ?」

「誰かさんが静かにしてたら、見つからないさ」




 咲良は膨れっ面をしながら睨んでくる。だから変顔はやめて欲しい。




「亮ちゃんってたまに厳しいよね」

「だから――」

「自分には弱いくせに」

「は?」

「タバコ!」




 忘れていたことを思い出して、俺は椅子を蹴り飛ばしてしまう。




「まままままさか、母さんに言って」

「言ってないよ」

「……そう」




 驚かせないで欲しい。
 母さんはタバコをものすごく嫌うから、家を追放されるところだ。




「祐介くんには言ったけど」

「ぐ。弱味を握られた感じがする」




 何か奢れと言われそうだ。
 タバコなんて吸うんじゃなかったと、今更後悔しても遅い。もう、やめたけど。