「なんか、懐かしいな」
思い出すのは制服を着た咲良。よく一緒に怒られたな。バカみたいにはしゃいでいた気がする。
楽しい思い出の一方で、悲しいこともたくさんだ。いや、苦しいことばかりが俺の中でふくらみ続ける。
「若かったよね」
俺たちの母校は何一つ変わっていない。
暗くてよく見えないが廊下も階段も教室も懐かしい。教室の中の教壇や机、時計やロッカーもそのままだ。
「とりあえず、この中に入るか」
俺は咲良を引っ張って適当な教室に入る。
スマホを取り出して時間を確認すると、午後7時前だ。
「なんかドキドキしちゃった」
窓際の椅子に座って、やっと俺たちは手を離した。