「そうだ!」
俺が急に方向転換をしたので、咲良が転びそうになった。慌てて引っ張りあげる。
「亮ちゃん!」
「しっかりついてこいよ」
「うん。なんかさ、亮ちゃん。その……なんていうのかな。男みたい」
「俺はずっと男だ!」
失礼な奴だと睨むと、咲良は頬を赤くしている。
少し寒かったかなと後悔していると、小さな声が聞こえた。
「え? なに?」
「ねえ、そろそろ手離してくれない?」
「別にいいだろ」
「……いいけど」
照れているから赤くなっていたみたいだ。
恥ずかしそうにする咲良を目にする日が来るなんて、ちょっと癖になりそう。
「どこに行くの?」
「咲良も知っているところ」
俺は気持ちを落ち着かせるために深呼吸する。



