「どこ行くの? もう、帰る?」




 まさか。これはチャンスだ。逃すわけにはいかない。
 いや、そもそも最初から2人になるのが目的だった。



 2人きりで話がしたい。




「行きたい所があるんだ」




 俺は咲良の手を取って歩き出す。




「亮ちゃん!?」




 戸惑う咲良の声。いつもと違う声音で、緊張のせいかその手を離しそうになってしまう。



 伝わってくる温もりが肌を刺激する。
 泣きそうなくらい嬉しい。咲良がそばにいる。こうして触れられる。



 やっと歩き出せる。ここから、俺は始める。



 理乃ちゃんに勇気を与えたように、祐介が挑戦し続けたように、どんなに寂しくても待ち続けた咲良のように、俺だって逃げずに進む。



 そして、本当の幸せを手に入れる。