「祐介、くん?」
謝るジェスチャーをしながら、誰もいない窓に謝り続けている。全く話を聞いていない。
とにかく椅子に座り、アイスが溶けてしまうからと食べながら祐介の電話が終わるのを待つ。
「亮ちゃん、ありがとう」
「え?」
突然、咲良が照れながら言う。
窓の方を見ていたが、すぐに改まったように真っ直ぐに見つめてきた。
「約束、守ってくれたね」
「……いや、守ってない」
ぽかんとした顔をする。
本当に百面相だ。見ていて飽きない。怒っている顔も、笑っている顔も好きだ。
泣いてさえいなければ、悲しむ顔も綺麗だと思う。泣き顔は辛いから。
「亮ちゃん、キモイ」
「なんだよ、それ」
「人の顔見ながらニヤニヤしないでよ。変態だと思われて捕まるよ?」
蔑むように睨まれて、本当だったら怒って文句を言うところだ。
でも、何だろうな。なんか、ほっとした。



