「花火大会?」

「そう。クリスマスイベントだって。咲良ちゃん誘って行きなさいよ」

「おい、さっきまでの離婚の話はどこいった!」

「……前菜的な?」

「的なって言うな!」

「それはまたいつかしてあげるから。楽しみに取っておきなさい」

「楽しみにする内容じゃねえだろ!」

「相変わらず怒りっぽいんだから」




 相変わらずって言うなら、突拍子もないことを笑顔で言う母さんのことだよ。




「花火か」




 これまであったたくさんのイベント。



 結局、咲良と楽しむことはなかった。大学での思い出、何1つ作ってやれなかった。



 ギリギリだけど。この花火大会、思い出になるかもしれないな。なったら、嬉しい。




「ありがとう、母さん」




 決めた。
 この花火が儚く散るのか、満開に咲きほこるのか。



 どちらにしろ、俺はこの瞬間を大切にする。



 咲良。
 その瞬間に、お前がいてくれるだけで。
 俺は幸せだ。