俺は手を止めて母さんを振り向く。
 思い出すかのように、目を閉じていた。




「不安だった。大学に行って、このまま咲良ちゃんたちと疎遠になるんじゃないかってね。亮が1人ぼっちになるんじゃないかって」

「友達いるよ。大学でも1人じゃない」

「うん、わかってる」




 母さんは目を開けて、急に俺の前まで歩いてきた。
 何をされるのかと警戒する。




「母さんは亮が幸せになってくれたら、本当に救われるの。心から安心出来るの」

「え?」

「だからね、コレ」




 いつから用意していたのか、押し付けられた紙を見る。それは何かの広告だ。