「温かい家庭、知ってるよ。心配しなくても、ウチは温かい家庭だよ」
「ありがとう」
ちょっと恥ずかしい。帰って早々にドキドキするとは思わなかった。
「ずっと先のことかもしれないけど、父親になることを怖がらないで。好きな子と一緒になるのを避けちゃダメ」
母さんはついに洗うのをやめてしまった。
手を拭いて後ろの椅子に座る。俺は作業を続けた。
「亮は後悔してる。損してる」
「え?」
「勝手に大学決めて、咲良ちゃんたちを避けてたでしょ。わかるんだからね!」
やっぱりわかっていたんだ。
それをあえて言わなかったのは、優しさだったのかもしれない。
「咲良ちゃんや祐介くんのこと、好きなんでしょ?」
「そりゃあ」
「だったら大切にしなさい。まあ、言われるまでもないんだろうけど」



