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「亮ちゃーん!」




 午前11時。
 改札を抜けると、すぐに咲良の声がして俺は手を振る。咲良もすぐに駆け寄ってきた。




「来たな」

「え? わたしなんか汚れてる?」

「……きたなの変換間違いだ。お前はどんだけ昔のガラケーなんだ」

「えー。スマホが優秀とは限らないじゃない」

「いや、優秀だ」

「ガラケーちゃんだって使えるんだから、責めないでよ」

「咲良。お前は携帯の話をしに来たのか?」




 変わらないやり取り。
 いい加減、コンビ組んでデビューしたくなるほどに慣れてきた。



 でも、こうやってボケたりツッコミしたりするのは久しぶりか。



 もう何ヶ月かで大学卒業。そんなクリスマスの日。



 咲良は俺が地元に帰ると聞いて駅に迎えに来た。
 寒い中をどれだけ待っていたのか、鼻が赤くなっている。