「何だよ、電話したくらいで驚くなよ」




 久しぶりに咲良の番号をコール。
 少しだけ緊張したけど、驚きながら応える咲良に助けられる。



 いつも通りのバカみたいな会話をして、本題に入る。




「お前、就職活動してるの? いや、邪魔したら悪いと思ってさ」




 大学4年の春だ。
 就職はもう決めなきゃマズイという時期だが、咲良は内定を貰えないみたいだ。




「夏は忙しいだろ。だからさ、12月に帰るよ。すぐに大学に戻らなきゃだけどさ、顔見せに行くから」




 弾んだ声で騒ぎ出す。
 そういうところ、まだ子供っぽくて好きだ。子供というより、感情を隠さないのかな。




「わかったから、しっかり就職決めろよ。あと俺が帰ること、母さんにも言ってくれるか?」




 どうせ母さんには毎日会っているんだろう。
 そう思った俺の耳に入ってきたのは母さんの声。すでに家に来ていたのか。