「あなた、誰だか知らないけど。お願い、彼を責めないで」
「でもっ!」
「こんな奴でもあたしは好きだったんだよ。今でも、バカみたいに好きなんだよ! でもね、嘘をついたことは後悔してない。悪いことだってのはわかってるつもり」
はっきりと理乃ちゃんは言い放つ。男が怯んだように見えた。
「友達があたしを救ってくれた。家に招いてくれて本当の家族を教えてくれた。あたしが知らなかった温かい家族を!」
「なんの話だ、理乃」
「咲良の家は幸せそのものだった。あたしも幸せになってみたいと思ったんだ。だから、あたしはあんたを試して気持ちを確かめてみた。散々な結果だったけどね」
理乃ちゃんの声はいつの間にか涙声になっていた。
それでも、さっきまでの恐怖が嘘みたいに消えている。



