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 地元に帰れば悲しさを思い出して、辛くなるだけだと思っていた。



 意外にも勇気を貰い、本当に意外な彼女から優しさを感じる収穫のある1日になった。




「ありがとうございました」




 気分良くラーメン屋から出ると、辺りが騒然としている。さっきとはまるで違う雰囲気に思わず足を止める。



 繁華街をバックに小さな人だかり。
 でも関わりたくないからと、すぐに去っていく人の波。




「ちょっと、あんた。もういいから! あたしが嘘をついたせいなんだから」




 歩いている人が振り返るほどの大声。
 姿は見えない。でも、あの声は理乃ちゃんだ。



 俺の足は自然と声を探すように歩き出していた。




「そう、理乃は嘘をついた。妊娠してるって、最悪な嘘をな!」