「アドバイスなんていらないんだろうけどさ、あんたたちもっと素直になるべきだと思うよ」
「え?」
「あたしはバカみたいな恋愛を沢山してきたんだ。本当にバカみたいなガキの恋愛をね。だからさ、何となくわかるんだよね」
思い出すように手元を見る。その視線のせいで気づいてしまった。
左手の薬指に指輪の痕。きっと、つい最近まで結婚を約束した彼氏がいたんだ。
「2人とも無駄な時間を過ごしてるなって。勿体なくて」
言われなくてもわかっている。
このまま、何も考えずに咲良と手を繋ぐことが出来たらって。
幾度となく俺の脳裏をかすめる咲良の笑顔。
そして、急にいなくなったあの日の不幸を……。



