幼い日。泣かせてやると言って、結局泣かせることの出来なかった咲良。
 強い女の子だと思っていた。



 でも、大人になった咲良は違った。
 こんなに簡単に泣くとは思わなかった。胸が痛くなるくらい苦しい。




「ごめん。約束するから」




 必ず、地元に戻る。
 だから、今だけは我慢してほしい。



 自分で選んだ道。この道を自慢したいから。
 咲良、お前にも自慢してやりたい。
 胸を張って歩けるようになりたい。俺の夢を見て欲しい。




「約束だ、咲良」




 差し出した小指に、震える咲良の小指が絡む。



 これは別れじゃない。
 また手を繋ぐための第一歩。
 俺と咲良の、大切な約束……。