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『亮ちゃん! 亮ちゃん!』




 お互いにまだ保育園児だった。



 その日は咲良の家にいた。
 まだ新築のいい匂いがして、整理されていない段ボール箱が山積み状態。



 咲良の家族が一軒家に引っ越しをした日。
 荷物の整理に俺の家族が手伝いに行っていた。



 咲良の部屋には女の子らしくないミニカーが並び、段ボール箱の一部は手作り電車。
 女の子の部屋とは思えない。




『ねえ、聞いてるの?』

『聞いてない』

『聞いてるじゃない!』

『あー。聞こえない、聞こえない』

『亮ちゃん!』




 あんまりお喋りで、面倒だなぁとか思っていた。




『ウチ、きれいでしょ!』

『新しいから当たり前だろ』

『ほんとだねーとか言えないの?』

『言わない』

『そういうのひねくれ者って言うんだよ』




 はい、はいと俺は空の段ボールを被る。