しばらくすると校舎が遠くに見え始め、このぶんだと間に合うと思った矢先だった。




「もうダメ」




 咲良が急にしゃがみ込んだ。
 俺は心配になって顔を覗き込む。




「どした?」

「お腹痛い」

「は?」

「ついでに気持ち悪い」

「お前、食べ過ぎだろ」

「だって、おばさんのご飯。美味しいんだもん」




 動けない咲良を放置するわけにはいかない。



 俺がため息をつくと、

「ごめん」

 悲しそうに言うから余計に怒れない。




「いいよ。歩けばいいんだから」

「怒ってる?」

「怒ってねえよ」

「……ありがとう」




 結局、2人揃って遅刻だった。