「咲良に聞いたのか? 気持ちを」

『いや、聞いてない』

「だったら――」

『いや、お前だ』

「どうして言い切れる」




 怒ったように言えば、祐介の大きなため息。
 わざとらしくてイライラする。



 何年か前に閉店したらしいラーメン屋の脇に、放置されていた椅子があった。埃をはらってそれに座る。



 苦しさから逃れたくて空を見上げれば小さな星が瞬く。



 ふとスマホを離して時刻を確認してみれば、午後9時。咲良を待たせすぎだ。




『亮が大学で東京行ってさ、あいつ変わったよ。多分、気づいたんだと思う。本当の気持ちに』




 祐介の声の調子が落ちる。こんな祐介をあまり知らない。
 思い詰めていたものを全部吐き出すみたいに喋って、寂しそうな感じも伝わってくる。
 胸の痛みがどんどん増す。