「で? 何か用か?」

『何かどころじゃない。咲良ちゃんが行方不明だ!』

「え?」

『いないんだよ。今日は大学来なかったしさ』




 言いづらい。
 あいつ、誰にも出かけること言わなかったんだな。そりゃ、行方不明だって思われて当然だ。



 無口な親父さんの顔を思い出して、俺は急に背筋が伸びる。
 これ以上、心配させるわけにはいかない。




「ウチにいる」

『え……』

「昼間にこっちに来た。でかい荷物持って」




 沈黙。
 多分、相当探し回っていたみたいだな。捜索願出されなくてよかった。犯人になるところだ。



 それにしても、本当に咲良は何しに来たんだろう。



 あいつは、会うのに理由がいるかと問いつめてきたけど。いきなり来るなんて、やっぱり普通じゃない。