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 俺は多分、混乱していた。



 突然、咲良が現れて懐かしくて、嬉しかった。
 反面、困惑もあったんだ。




『咲良。絶対にここ、動くなよ』




 だから、落ち着く必要があると思ってアパートを出ることにした。小さく、わかったと返事をした咲良は少し悲しそうな目をしていた。



 逃げるようなことをして悪いと思っても、俺の足は外に向く。
 整理するために。
 違う。今、咲良の言葉を聞いたら、どうしてかと追求されたら。全て言ってしまいたくなる。



 俺は、弱い。とてつもなく弱いから――――。