母さんが時計を指さす。もう15分もない。




「やっばーい! 亮ちゃん、行くよ!」

「引っ張るな!」




 腕を引っ張られ、靴も適当に履いて走る。
 学校が近いからと言って、ゆっくりしすぎたな。




「行ってきます」

「おばさん、ごちそうさま。行ってきます!」

「気をつけてね!」




 すでに遠くに聞こえる母さんの声。
 俺は咲良を追いかけるように走る。



 夏の暑さの中をひたすら走り、汗で制服が張り付くのも気にしていられない。止まったら確実に遅刻だ。



 教室に入ったら、まず水を飲もう。