「なんつー顔で走ってきてるんだよ」




 到底たどり着けない。
 それでも祐介は大きく手を振り、咲良は満面の笑みを浮かべてダブルピース。




「わけわかんね……っ」




 電車は容赦なくスピードを上げて、あっという間に見えなくなってしまう。



 俺の頭に2人の表情が焼き付いて離れない。




「何のために……」




 何のために冷たくしてきたと思っているんだ。
 あいつら、全くわかってない。



 傷つけるのが嫌で、最低限の付き合いしかしてこなかった俺だぞ。
 何で、あんなふうに笑えるんだよ。




「バカじゃねえの、本当に」




 バカだ。本当に、バカだよ。俺はバカヤロウだ。



 久しぶりに泣いた。
 あいつらの優しさに、笑顔に、別れることの辛さに。



 涙が止まらなくなった。