「気をつけて」

「母さんも元気で。後で連絡する」

「待ってるからね」




 ドアが閉まり、俺は母さんに手を振る。
 すると、母さんは驚いた表情で後ろを振り返った。




「え?」




 俺は不思議に思い、母さんの目線の先を追う。
 動き出す電車のお陰で、隠れていたものが見える。



 走ってくる2人。咲良と祐介だ。
 走りにくそうなワンピースを着て、祐介なんて寒いのに半袖だ。




「嘘だろ」




 まさか、こんな形で2人に会えるとは思わなかった。もう、しばらくは見られないと諦めていたのに。



 諦めていた?
 俺は、本当は2人に会いたかったのか。
 ずっと、あの頃みたいに笑いたかったんだ。